エレクトロニカはどこへ行った?

6/5は名古屋の「SAKAE SP-RING 2010」に行ってきました。http://sakaespring.com/
見てきたのは、「キノコホテル」「たむらぱん」「immi」「Saori@destiny」ですが、それについてはここでは書きません。Twitter等でだいたい書いちゃったので、ここではimmiを見て思い出した、ACOについて書くというプレイです(笑)。immiのどこがACOを思い出させたのかというと、声とダブっぽい音の感じですね。後者はライブ用音源でそういう所もあったという程度ですが。

さて、ACOと言えばもっともよく知られているのは、TVドラマの主題歌にもなったこの曲でしょう。本上まなみ奥菜恵という当時の2大美女(私見)が出演していた「砂の上の恋人たち」というドラマでした。シングルヒットもしたと記憶しています。
悦びに咲く花 - ACO

プロデュースは、「まりん」こと砂原良徳電気グルーヴを脱退した直後で、私はこれをきっかけに彼の名前を意識し始めました。このシングルが収められているアルバム「absolute ego」は、それまでの彼女が当時たくさんいたR&B歌姫の中の一人という位置から、大いに飛躍した傑作です。一言でいうとアンビエントぽいR&Bという感じです。
SPLEEN - ACO

そういう音に、ACO自身の女性のどろどろしたダークな部分を美しく昇華した歌詞と、独特の情念がこもった声が乗ります。
このアルバムには、その他Stuart Matthewman(Sadeのメンバ)がプロデュースしたレゲエナンバーの"Intensity (you ara)"等が収められています。

absolute ego

absolute ego

なお、私のハンドル名とこのアルバムのタイトルは関係ありません(笑)。ちなみに全曲まりんプロデュースというわけではなく、適材適曲(?)という感じで全体のプロデュースはACO自身じゃないでしょうか?このアルバムはACOのそれまでのアルバムとは別人かと思うくらいにクオリティが一気に上がりました。例えるなら岡村靖幸のアルバム「靖幸」とその前ぐらいに違います(笑)。

ところが、次のアルバムではさらに大きな飛躍を成し遂げます。

material

material

砂原良徳プロデュース曲が減り、今回にプロデューサーとして参加したのは、UKダブの総帥と言われるAdrian Sherwood。1曲目の彼のプロデュース曲。ちょっと長いですが、これだけでもこのアルバムが傑作であることが分かります。音の空間的な作りが素晴らしい。
メランコリア - ACO

前作のアンビエントR&Bからさらにダブ指向のエレクトロニカに進化しました。この頃のACOビョークと比較されることも多く、明らかに世界的なエレクトロニカの隆盛とリンクしていたと言えるでしょう。なおかつ、日本語の歌詞で自分の声を通して自分の音楽としていたという意味で世界に誇れる水準のものだと言えます。私はこの頃あたりから、洋楽の流行の音に興味が無くなって行きました。60年代や70年代のように英米でポップミュージックの革新が日々行われていた頃と比べれば、90年代以降はさすがに革新的な音というのもなかなか見当たらなくなります。一方、かつての輸入業くささが無く、洋楽を自分の血肉としたミュージシャンが日本からたくさん出て来ていました。例えば、スガシカオBonnie PinkくるりOriginal Love等々。ACOも私にとってそういう新時代の日本のミュージシャンの代表のような存在です。
アルバムからもう1曲。
星ノクズ - ACO

実は、これ以降のACOの作品は聴いてないのです。しかし、この2作が日本のポップミュージックの歴史的傑作であることに変りはありません。