YeYe の2nd Album 「HUE CIRCLE」レビュー


YeYeのニューアルバム「HUE CIRCLE」を2回聴いた。それは、3回目頭が熱くなり、4回踊り狂い、5回鳥肌が立つこと、全体を2回繰り返すことを意味する。

前作の1stも素晴らしかったし、それから2年弱の間のライブ活動やUSTでの新曲の演奏、各種コンピレーションアルバム等での新曲(remix)*1の発表からだけでも、今回のアルバムが十分期待できるものであることは予想できた。しかし、その期待を大きく上回る出来栄え。エイリアンが1体、来るかと待ち構えていたら群れで来たような衝撃。

YeYeは、いわゆる弾き語りの「女性シンガーソングライター」とは全くかけ離れた存在だ。あらゆる音楽を自分で咀嚼し、自分の音を巨大なキャンパスに描く画家だ。完全ワンマンの1stほどではないが、今回のアルバムでもバンドの助けを借りながらも大半の楽器はYeYe自身が弾いている。弾き語りのライブではそういう側面は分かりにくいかもしれない。しかし、レコーディングされたアルバムではそういうYeYeの凶暴とも言える雑食さが十分に表現されている。

YeYeの音楽の向こうには、いろいろな音楽の影を見ることができる。日本のポップスはもちろんのこと、米のインディ・ロック、ヨーロッパのインディ・ポップス、カンタベリー、ミナス。私には行ったことがない土地ばかりだが、YeYeにゆかりの京都の盆地と滋賀の山と琵琶湖は知っている。

もし今から私が海外に行くことがあったらこのアルバムを何枚も持って行きたい。そして、いろいろな国の人に、「これが今の日本の音楽だ」と言ってこのアルバムを配りたい。ヨーロッパに行っても、アジアに行っても、アメリカに行っても、南米に行っても自信を持って紹介できる。


1曲目の「パレード」。このダンサブルで不思議なポップスにて、ドラムを含めてほとんどの楽器をYeYeが弾いている。
2曲目「おいで」のグルーヴィで切ない前衛ポップス。3曲目「Do We We a」のアバンギャルドなファンキーさ。
4曲目「明日は来ないか」の胸を締め付けられる透明さ。5曲目「TAO」の思わずニッコリしてしまうファニーさ。
6曲目「プログレ」のJazzyさとプログレッシブ・ロックっぽいエンディング。
7曲目「あるある言いたい」のカントリーともケルトとも言えるような不思議さ。
8曲目「ハイ、ディア、ペネロピ」のグランジ辺りと通じる男っぽい、けだるい狂気。
9曲目「fangjia」の大地のような力強い優しさ。


何もかもが素晴らしい奥行きと、地に足が付いた深みを感じる。

最後の10曲目「Miserable」で、このアルバムで初めて4つ打ちが流れて来た時の解放感は、オールナイトイベントの夜明けにも似ている。

本当に素晴らしいアルバムだ。



P.S.
■ラリーで購入の方には先着でYeYeのアコースティックセッション2曲を収録したDVD-R(非売品)をプレゼント。
http://www.rallye-label.com/?pid=62302501

■FLAKE独占特典はアコースティックセッションを収録したDVD-Rです!このためだけの撮り下しで、RALLYE特典とは別のものになります。
http://www.flakerecords.com/rcminfo.php?CODE=19887

■タワー・レコードやHMVもそれぞれ何らかの特典があるようです。

*1:例えば、http://www.rallye-label.com/?pid=55435158 Do We We a(KISSES version)とプログレ(CONCERT version)が素晴らしい。