3776(みななろ)の新作CDレビュー:アイドルという自由、アイドルという不自由(1)

ソノシート」というものをご存じだろうか?1980年頃、雑誌の付録などに付いて来た物をかすかに記憶している。*1ネットもCDも無い時代、カセットはかさばるし高価な時代、録音したものを簡単に大量に配布する手段として、画期的なアイデアであったに違いない。

その結果、いろいろな用途に利用された。そのひとつとして、アイドルの声を使ったノベリティグッズにも利用された。つまり、音楽に限らず音で表現できるものなら何でも使えたわけだ。そこには音なら何でも表現できる自由と、収録時間や物理的な配布という不自由があった。

アイドルには不自由さがある。昔はインタビューで好きな食べ物を答えるのに、正直に焼肉と答える訳にいかず、パフェとか可愛いものを答えさせられた。アイドルソングにも不自由があった。かつてPerfumeの「ポリリズム」がカッコ良過ぎるとして差し戻されそうになった時、中田ヤスタカが事務所を説得した話はご存じの方も多いだろう。

そんな時代も過去のもの。今やカッコいいアイドルソングは当たり前になりつつある。アイドルらしからぬ楽曲をアイドルに歌わせて、その化学反応を楽しむ術をヲタ側も運営側も当たり前のように持っている。


3776(みななろ)の曲を初めて聴いた時、全ての人は戸惑いを感じざるを得ない。前身のTeam M2(チーム・エム・ツー)の曲も同様だ。

カッコいいとか尖がっているという言葉がこれほど似合う楽曲もないが、同時に「アイドル」であることの必然性、(富士山の麓・富士宮の)「ご当地アイドル」である必然性を強く感じる楽曲は、他では存在しない。
アイドルという不自由な存在に、敢えてハイクオリティな楽曲をぶつけているのとはレベルが違う。

Team M2および3776の楽曲を全て作詞/作曲/編曲/演奏/レコーディングされている石田彰さんに、お会いした時に尋ねた事がある。「何か他に音楽活動されているんですか?」これだけの高品質な楽曲を作られているのだから、アイドルに限らず他でも音楽家として活躍されていたとしても不思議ではない。しかし、答えは「いいえ」。
それどころか、「アイドルの楽曲を作っていなかったら、自分の曲を世に問う事はなかっただろう」という返答だった。この返答にも大いに戸惑った。


そんな3776の新作CD2種類が、6/22発売された。


左下が「序曲」(NAMA-0006)、右下が「心配のタネ」(NAMA-0005)
上に並んでいる6枚はアナザー・ジャケット6枚組(ジャケットのみ)
3776のライブ物販、通販、取扱い店舗で購入可能予定