時空レポート〜アフターワンマンライブの世界の君へ〜2015/7/11 3776(みななろ)ワンマンライブ@下北沢Basement Bar


3776(みななろ)がOTOTOYの企画でワンマンライブを行う。場所は下北沢Basement Bar。そのアナウンスを聞いた時、個人的には、諸手を挙げて喜んだかと正直微妙であった。

Seasson#3.1の驚くべき新曲群が次々と披露され続けていたが、まだまだ歌いこなれていない曲もあった状態で、今ワンマンをやるべきタイミングなのかどうか?
都内では初ワンマンだが、富士宮では定期公演や3776の日のイベントはワンマンだったので、「初」という重みがどれだけあるのか?会場のBasement Barが変形でスピーカーの位置も変わってるので、音質的にどうなのか?
喉があまり強くないちぃちゃんのソロプロジェクトのSeason#3(.1)で60分持たすことができるのか?
色々心配のタネは尽きなかった。


OAに"amiina"、ゲストに元3776メンバーのまりりんとのアナウンスがあり、石田さんのことだから色々作り込んでくるだろうとの安心材料や期待もあったが、追い打ちをかけるように、真裏で元3776の研究生グループ「Mi-II」(ミートゥー)のメンバーの卒業ライブもあるという落ち着かない状況でライブを迎えた。

客入れや転換の選曲は"Rickie Lee Jones"。ブルージーでカントリーを含んだJazz。石田さんの選曲なのだろか?だとしたらまた謎が増えた感じである。


OAのamiinaのライブ、先日の主催イベント「WonderTraveller!!! act.2」も素晴らしかったが、今日も安定・安心・貫禄のパフォーマンスであった。「今日は特別なライブ」という事で披露した「illumina」を含み15分弱のコンパクトなセットだった。
amiinaと3776は、現在の楽曲派アイドルの2大巨頭ぐらいのポジションにいると思うが、メンバー同士のシンパシーは別にして、音楽や存在は対照的だと思う。
amiinaがしゃれたデザインの製本されたハードカバーの書籍だとすると、3776は手描き・手作りの飛び出す絵本のようだ。


いよいよ、3776の登場。「あなたは富士山を見たことがありますか?」という前口上の後、1曲目は「デジタルネイティブ」。
ちぃちゃん自身が疲れる曲と言っていたように、かなり歌うのがハードな曲をオープニングに持ってきた。演者側の意気込みを強く感じる選曲だ。

アルバム「ラブレター」と同じつなぎで2曲目は「誰かのモノです」。初見と思われる客から「すげえ!」「カッコいい!」という声が漏れる。「そうだ!これが3776だ!」


そういえば、ステージの上手にヘッドセットをした石田さんが居る。後で分かったが、マイクと思われたのはヘッドセット型カメラで、他の機材は「3776 Extended」で使用していたルーパーだった。
ルーパーでちよのちゃんのボーカルをリアルタイムにサンプリングし、他の音源と重ねて次の曲間のMCで流すという荒業を披露していた。3776 Extendedの経験を踏まえた素晴らしい試みで、MCの間も曲が途切れない・踊っている足が止まらないという意味で非常に効果的であった。


次の曲は「時空ラブレター〜アフター大噴火の世界の君へ〜」。もしかしたら21分を越えるアルバム版をライブで披露するか?と思ったがさすがにそれは無かった(笑)。ちぃちゃんと入れ替わりで、まりりん登場。ガットギターを持っている。Team MII時代にライブでギターを弾いてことがあることを知っていたので、もしかしたらまりりんが弾くんじゃないかと期待したがそれも無かった(笑)。

石田さんがギターとコーラス、ルーパーと大活躍で披露した曲は「コケモモ」。この曲について私はかつてこんなことを書いていた。

この曲を聴くとビートルズ「Help!」を思い出す。ジョン・レノンが「Help!」について語った言葉、「ヒットのため、アップテンポだったが、あの曲はスローテンポで苦しみを表現すべきだった。」「コケモモ」もテンポを落として歌詞がよく聴こえるようなバージョンにしたらどうなるだろうか?そんな事を考えている。*1

まさか、これが実現するとは!ジョン・レノンが「Help!」で表現したかったのは、大スターになって追いかけられる窮屈な状態から抜け出したいという心の底からの叫びだっただろうが、3776が心の底から叫んでいるものは何だろう?


まりりんと入れ替わって、ちぃちゃんが登場し、「洞窟探検」、「生徒の本業」、「八合目にゃまだ早い」を披露。どれも3776の新しい方向性を表した意欲作。変拍子サンバ「生徒の本業」で3776流コール・アンド・レスポンスが楽しい。


続いて、「避難計画と防災グッズ」で、まりりんが「素敵な彼」役ダンサーとして登場(笑)。この頃気が付いたのだが、石田さんも振り付けらしいことをしている(!)。まりりんがフロアに降りて煽る煽る。


まりりんとちぃちゃんとのMCのやり取りを聞いていると、まるでSeason#2の時に時間が戻ったような錯覚を覚える。そして「心配のタネ」、「みにきて!」とSeason#2の曲を連続披露。フォロアも曲名を聞くだけで反応が大きい。曲も、息の合った2人の特徴ある振り付けも・声も、「これも」3776なのだ!


最後の曲「3.11」でまた現在に引き戻される。過去の3776は、やはり思い出の中だけにあるものなのかもしれない。*2


主催者側のアナウンスで、アンコールは無しでライブは終了した。


ライブの後、私の心は始まる前よりさらに混乱していた。
過去も現在も将来も、今この瞬間の下北沢も富士宮も、いろいろな3776を一度に体験したような気がした。

  • このライブは良かったか?

 もちろん、答えはYES。3776史上過去最高の内容だった。

  • このライブを足掛かりに、3776はさらにステップアップしていくのか?

 もちろん、答えはYES。

  • 今後3776は売れていくのか?

 もちろん、そう願いたいが、この事は分からない。

3776の音楽も存在も、人を釣り上げているとしたら、釣り針が口に引っかかるような浅いレベルではない。
心の奥の深い所から釣り上げられる。釣り上げられた人を狂わす魅力(魔力)を持っている。
なぜそういう事が言えるかというと、私も心の底から釣り上げられて、狂わされた人のひとりだからだ。

売れるということは、「そこそこ好き」とか、「大好き」のレベルの人を増やせばいいのだ。
別に狂わされた人を増やす必要はないのだが、何か心の底で共鳴しているのだろう。