日本一厄介な界隈のアイドル、Especiaの最高傑作「Primera」を厄介にレビューする。

思えば、Especiaは、登場した時から厄介だった。
「堀江系ガールズグルーブ」というおしゃれな肩書きなのに、衣装は大阪のおばちゃん風というアンバランスさ。80年代アーバンなサウンドを鳴らしながら、本人達のパフォーマンスが全く着いて行けてないチグハグさ。Twitterのタイムラインに流れてきた「Dulce」の曲に衝撃を受け、検索して見た初期ライブ動画に逆の意味で衝撃を受け、ブラウザを静かに閉じたことを憶えている。

それから、月日は2年ほど流れたが、最近はEspeciaの現場が厄介だ。
相変らず、おしゃれで洗練されている楽曲が繰り広げられるライブにて、Especiaのオタクたちは、まるで地下アイドル現場のように濃厚なmix、ガヤ、リフトを入れてくる。
本当のところはよく分からないが、ベタでやっているというより、おしゃれな音楽が鳴る現場で、敢えてベタなアイドルヲタを装っているようにも見える。しかし、「ちょっとEspecia良いな」と思った一見さんが引いてしまい、2度と来なくなることさえある程度に厄介なことも確かだ。

詳しくは書かないが、ここに至るまでには、運営・製作側の厄介さ(決して悪質という意味ではない)もいろいろあったから、その積み重ねの結果なのだろう。

そんなEspeciaがメジャー・デビューを果たした。
今の時代「メジャー・デビュー」は喜ばしいことばかりでないことは明らかだ。

活動に制限ができて、楽曲のクオリティより大衆向けの分かり易さが優先されるのではという懸念の中、発表された楽曲が「We are Especia 〜泣きながらダンシング〜」だった。懸念に追い打ちをかけるような、ダサい歌詞、お涙頂戴的な安っぽい展開の楽曲。猛反発を受けたのも当然だった。

しかし、そこで終わらないのが、Especia界隈のやっかいさだった。

メジャー・デビューミニアルバム発売までの2ヶ月ほどの間、予約イベントを詰め込めるだけ詰め込んで、オタの財布から少しでも金を搾り取ってやろうとした、メジャーの策略に対して、どんなEspeciaオタより現場に熱心に通い続けたのが、若旦那だったのだ。
さすがの私も不憫に思ったし、若旦那の人柄のせいか、現場のオタ達もだんだん彼を温かく受け入れていったようだ。どこまで本気なんだろうと思わなくもないのだが(笑)。

そんなEspeciaのメジャー・デビューミニアルバム「Primera」を聴いた。

素晴らしいアルバムだ。しかし、完全なアルバムではない。1トラック目の前半3:30をカットし、6トラック目を飛ばして、編集してみよう。そうすれば、もう完璧なアルバムだ。

1.「We are Especia 〜泣きながらダンシング〜」
素晴らしいベースとドラムは、Especiaの生バンドライブでもおなじみの角谷光敏さんと平岡タカノリさん。これは単なるディスコではない。Jazz Funkだ。若旦那作ということも忘れてはいけない。

2.「Interlude」
口直しのために、この位置に入っていると思うのは深読み過ぎるだろうか?(笑)

3.「West Philly
Rillsoulさん作のブルージイなソウルJazzナンバー、かつモダンなリズムの訛りを持った曲。こちらのリズム隊も角谷さんと平岡さん。こんな渋くて先鋭的なアイドル楽曲、聴いたことがない。

4.「Sweet Tactics
前の「West Philly」に煽られたのか、こちらの曲が煽ったのか?こちらもめちゃくちゃ渋いJazz Funk。本アルバムは、Especia 5人のボーカルも今までのどのリリース曲よりも素晴らしいのだが、特にこの曲の、はるか、えりか、もなりのボーカルは三人三様に素晴らしい。渋い楽曲にいくつかのフルーツの甘さを程よく加えたようだ。そして、このリズム隊も角谷さんと平岡さん。キャー、素敵!

5.「シークレット・ジャイヴ」
80年代フュージョンの良質でポップなエッセンスを抽出したような曲。これはEspeciaの「クロスオーバ・イレブン」だ。

6.「Skit」
あまり面白くない(笑)。何か元ネタがあるのだろうか?

7.「さよならクルージン」
ループな構造ながら非常にキャッチーな曲。本アルバムのもなりのボーカルは、時に黒人の幼い男の子のようにも聴こえる。

8.「Security Lucky」
このアルバムの中では、今までの路線に最も近い曲。それだけ本アルバムが攻めてる証拠。何となくエンディングの曲っぽい。

9.「Outro」
エンディングというより、インタルードっぽい。気が早いが、このアルバムの続きが楽しみだ。

Especiaの5人は、ダンスも歌唱もますます上手くなり、その成果がしっかりこのアルバムには収められている。

Espeica界隈とは対照的に、本人達はメジャー感がありながら、すれることなく、ますます可愛くなっている。

周辺の厄介さが、本人達の人柄の良さや魅力を引き立てているとしたら、これ以上理想的なアイドル・サクセス・ストーリもないのかもしれない。
これからもちょっと離れた所から(笑)末永く応援して行きたい。

Primera(初回限定盤)

Primera(初回限定盤)

Primera

Primera

P.S. 書き忘れそうになったが、CDの帯とライナーノーツの金澤寿和さんの文章もまた、80年代あたりのバカな洋楽評論家風の内容で「厄介」に悪乗りしていると私は思っている。ホント頼みますよ、先生。